「…………」
(いったいどうして、リアム様はわたしにこんな目を向けるのかしら)
そもそも、自分は何に対してお礼を言われたのだろうか。
エリスが不思議に思うのと同時に、リアムは柔らかな笑みを湛え、唇を開く。
「あれほど楽しそうなオリビアを見るのは、何年ぶりかわかりません。それに、エリス様は私の招待を受けてはくださらないと思っていましたから」
「……え?」
刹那、エリスは小さく声を上げた。
お礼の理由が、オリビアを楽しませてくれたから、というのはわかる。
だが、招待を受けないと思っていた――というのは、いったいどういう意味だろうか。
「あの……それは、どういう……?」
招待を受けないと思っていたなら、なぜ招待状を送ってきたのか。
そもそも、招待を受けないと思った理由は何なのか。
リアムの言葉の真意がわからず、エリスは戸惑いを見せる。
するとリアムは、そんなエリスの反応を見て、『アレクシスから何一つ事情を聞かされていない』ことを確信したのだろう。
スッと目を細めると、低い声で「やはり」――と呟いた。
そうして今度は、冷めた紅茶のカップにしばらくの間視線を注ぎ――再びエリスを見据えると、こう続ける。
「気分を害されたら申し訳ありません。隠すようなことでもないのでお伝えしますが、オリビアは以前、殿下のことをお慕いしていたのです」



