シオンは、年下らしい屈託のない笑みを浮かべる。
するとオリビアは、少しばかり動揺を見せた。
「別に、大したことではありませんわ。昔は、わたくし自身、あまり身体が丈夫ではなくて……ですから、その過程で覚えてしまったというだけで……」
「だとしても、凄いことだと僕は思います。現に僕も姉さんも、オリビア様に助けられたわけですから。僕は、オリビア様をとても尊敬します」
「そ、……そう。……どういたしまして」
「オリビア様、よろしければ、もっと色々教えていただけませんか? 貧血予防にいい食べ物は、肉とほうれん草と海藻……でしたよね。では、他には。他にも何かありませんか? 例えば、果物などで」
「果物?」
腑に落ちない様子で聞き返すオリビアに、シオンは笑みを深める。
「温室に入ってすぐのところに、モモとザクロの木が植わっていました。それでもしかしたら、オリビア様は果物にもお詳しいのではと思ったのです。実は、姉さんはあまり肉を好まなくて……。ですが、果物なら食べられるので」
「――! あなた、ザクロを知っていますの?」
「はい。ランデル王国では自生している地域があるのです。とはいえ、種が多くて食べづらいので流通はしていませんが……。帝国で見るのは初めてだったので、驚きました」
何気ない会話の中に、ランデル王国の出身――それも、商家の人間らしき内容を織り交ぜてくる辺り、流石シオンである。
シオンは温室内をぐるりと見渡し、オリビアに向き直ると、ふわっと笑みを零した。
「ざっと見たところ、他にも十種類ほどの果樹が植わっているようですね。ですが、僕はまだ学生ですし、植物に特別詳しいわけでもないので、あまりわかりません。ですから、僕に色々とご享受願えませんか、オリビア様」
「……っ」



