「参加の返事を出したって……でも姉さん、まだ悪阻があるだろう? 途中で気分が悪くなったらどうするんだよ」
「もしそうなったらすぐに退席するわ。それに、気分が悪くなる原因が悪阻だとわかってからは、あまり辛くないのよ。お医者さまも、無理をしなければ外出も構わないと仰っていたし」
「……それは、そうかもしれないけど」
シオンはとても不安になった。
体調のことは勿論だが、正体を隠して会うということは、別人になりきらねばならないということだ。
自分ならともかく、果たしてエリスにそのような器用なことができるだろうか。
(姉さんに商家の夫人なんて役が務まるのか? そもそもは僕が言い出したこととはいえ……もの凄く不安だ)
それに何より、正体を隠して友人になるなど、不誠実極まりないではないか。
もしやエリスは、正体を明かす心づもりなのではないだろうか。
(姉さんの性格なら、十分あり得る)
――が、今聞いてもきっとエリスは答えないだろうし、返事を出してしまったものはしょうがない。
それに、反対されるとわかっていた……と言うくらいだから、それなりの覚悟があるということなのだろう。
(まあ、正体が知られたとしても、最悪妊娠のことだけ隠し通せれば……)



