【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

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「――え? お茶会に招待された? リアム様から?」

「ええ。リアム様とオリビア様、それから、わたしとあなたの四人でお茶をしませんかって。それで、できたらわたしたちに、オリビア様の友人になってほしいと仰っているの」
「友人? 僕らに?」
「そうよ。皇子妃としてではなく、『ランデル王国の商家の夫人、エルサ(・・・)』と、その弟としてって。――オリビア様がご結婚されるまでの、数ヵ月の期限付きで」
「え? 正体を隠したままで……しかも期限付き?」
「ええ。詳しくは手紙に書いてあるわ。あなたにも読ませていいって。……とにかくわたし、これを読んだらオリビア様のことをとても放っておけなくて……でもシオンはきっと反対すると思ったから、自分の参加の返事を先に出してしまったの。相談しないで決めてしまって、本当にごめんなさい」
「――!」


 その日、授業を終えたシオンはエメラルド宮を訪れていた。

 十月も半ばのこの季節、午後六時ともなればすっかり日は暮れているが、学院は平日であれど、門限の午後九時までなら外出が認められている。

 その為シオンは、アレクシスが出張の間はエリスも不安が大きかろうと、授業が終わるとエリスの様子を見に来るようにしていたのだが……。


 エリスの部屋に通されるなり、リアムから届いた手紙について聞かされたシオンは、その突拍子もない内容に困惑せざるを得なかった。
 と同時に、既に参加の返事を出してしまったというエリスに、憤りを隠せなかった。