王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

ビックリしたようで、美姫の目が見開かれた。



「碧人様は…優しいですね」



美姫は前と同じように苦笑いのような顔で答えてきた。





ー同じ気持ちを答えてもらえると思ったわけじゃない。

ただ、こういう反応をされるとは思わなかった。



おそらく自分の気持ちを信じてもらえていないだろう。

そのことに、かなりショックを受けていた。



「俺は…優しくなんかないよ」



思わず不機嫌そうな低い声で言って、

起き上がって美姫に背を向けた。



ーこんな風に拗ねたような態度をとりたいわけではない。



そもそも今まで、

あまり美姫と接しようとしなかったため、

信じてもらえる訳がないのはわかっている。



それでも、

自分の『好き』という気持ちは信じてほしかった。



「すみません、碧人様はさつき様のことが好きだと思っていました。」



美姫がおそるおそる背後から声をかけてきた。



「え?なんで柏原?」



思わず美姫の方を振り返った。



「先ほど…翔の元に行ったときに着いて来ていただいたのは、

翔がさつき様にくっついているのが嫌なのかと思いまして…」