王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

キスをした瞬間、

一瞬招待客からびっくりしたような声が聞こえたが、すぐに拍手と歓声に変わった。



拍手と歓声を聞いて、自分が正気に戻った。

自分の気持ちばかりで、

美姫のことを考えられていなかった。



おそるおそる美姫を見ると、顔が真っ赤になっていたが、

嫌がっている顔はしていなく安心した。



「2人はただの政略結婚だと思ってたけど、

お互い好きだったんだね」

「すごくお似合い」



招待客からそのような声が聞こえてきて、

美姫には悪かったが嬉しかった。





結婚式、披露宴と順調に進み、

招待客への挨拶もほとんど終わり、

フリータイムのような時間になった。



「すみません、

ちょっと翔が酔ってそうなので、席に行ってきますね」



伊集院の方をみると、

かなり酔っていそうで、聖女の柏原の肩を借りているような状態だった。



「俺もいくよ」



美姫は少し驚いていたが、嫌がりはしなかったので、着いていった。



「翔!飲み過ぎだよ」



「おー!美姫と西園寺!結婚式最高だったぞ!特に誓いのキスが」



ー悪酔いしているようだ。

キスについて美姫の前で触れたくなかったので、話を変えた。



「かなり酔っているようだな。

柏原が重そうにしているが。」



「あー、さつきちゃんごめんね。」



柏原から離れて、

ふらつきながらもニヤニヤしながら言ってきた。



「それにしても、唇にキスをするとは思わなかったぞ。いつの間にそんな仲になったんだ?」



「伊集院に関係ないだろう」



無意識に声が低くなってしまう。

イライラしてしまう。



伊集院はニヤニヤしながら、

美姫に「良かったな」と言いながら、頭をポンポンしていた。



美姫が顔を赤らめているのを見て我慢できなくなり、「行こう」と言って、

美姫の手を引っ張って、その場から離れた。



「碧人様?」



美姫が不思議そうに尋ねてくる。



今の自分はいつもと違って、美姫にとっては不思議なんだろう。



「ごめんね、そろそろ疲れちゃって」

「大丈夫ですか?」



心配して美姫が俺の体に手を回して、

支えるように歩いてくれた。



「大丈夫だよ」

そう言いつつ、美姫からは離れず、

むしろ美姫の腰に手を回して帰ることにした。