王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

ーコンコン



「入ってもいいかな?」

「どうぞ」



「失礼しま…」



美姫の控え室に入り、

初めてウェディングドレス姿を見て言葉を失ってしまった。



ーすごく綺麗だ。

元々美姫のことは可愛く思っていたが、

ウェディングドレス姿で、いつも以上に可愛く見える。



「碧人様?」



美姫が怪訝そうに見ている。



「ご、ごめんね。すごく綺麗だよ。」



私はいつも通り微笑んで答えた。



「ありがとうごさいます。…碧人様もすごく素敵です。」



美姫が頬を赤くしながら微笑みながら答えてくれて、

また言葉を失ってしまった。



今までは緊張してるのか苦笑いのような笑顔が多かったのだが、初めて自分に心から微笑み返してくれた気がする。



心臓がドキドキしているのが自分でもわかる。



ーなんだ、これ。



自分自身の変化に戸惑っていたところ、

私の後ろにいた雪が、

「美姫様、本当に素敵ですね」と声をかけてきた。



「ありがとうごさいます」



美姫が雪にも微笑みそうになっているのを見て、咄嗟に美姫と雪の間に入った。



ー美姫の笑顔を見せたくない。



「「…碧人様?」」



美姫と雪に不思議そうに見られ、

ハッと我に帰り、

「ごめん、そろそろ時間かと思って」と言い訳をした。



しかし、本当に控え室を出る時間だったようで、スタッフの方が来て助かった。



美姫に腕を捕まれながら2人で式場に向かうが、

いつものように他愛もないことも言えずにいた。



ー俺はどうしたんだろう。



「もしかして、碧人様緊張されていますか?」