あたしの脚がもたついてよろけると、横から引っ張りあげられた。男の視線が、ちゃんと歩けと言わんばかりに鋭くあたしを射抜く。
「……っ」
怖い。
その鋭い視線に、息を潜めた。
……正確には、“息を潜めたフリをしてあげた”あたし。傍から見たら、男に萎縮して小さくなってるうさぎちゃんにでも見えてるかもしれない。
男もしおらしいあたしの態度に鼻を鳴らして、歩く速度を早めた。
どう?
お望み通りの従順そうな女に見えるかしら?
恵まれた容姿に環境、肩書き、生まれ持ったカリスマ性やら。そーいうののおかげでこの男にはきっと、自分の思い通りにならなかったことなんてなくて。
街でテキトーにひっかけた女が、こうやって顔を赤らめて、自分についてくるのを当たり前。いつも通りだと思ってるんだろう。

