「アイカが、お前と仲良くしたがってる……。今までアイツが俺や周りに何かを頼むなんて初めてなんだ。だから頼む、兄貴としてアイツの願いをなんでも叶えてやりてんだ……」
ふーん?
偉そうにふんぞり返ってるこれのどこが人にものを頼む態度だ。聞いて呆れるっつーの。
つーかなんかコイツ、シスコンすぎてちょっとキモイんですけど……。
そりゃー見た目だけは極上の男だけど。顔はともかく、今も必要以上に触れている身体も、鍛え上げられていて、触れば触るほどハマりそうになる。
でも蓋を開けてみれば、妹のことを思い出して鼻の下を伸ばしてるただのシスコン野郎だった。残念すぎる。
……あたしはこんな男を好きなふりをしないといけないのか。ちょっと無理かも。付き合ってらんねぇー。
「えぇ……と、」
「お前はもしかしたらどっかで耳にしたことがあるかもしれねぇが、アイツは血のつながった本当の妹じゃねぇ。そのことをアイツだけが知らねぇ……というか、“覚えてない”んだ。だが、血なんて関係ねぇ、アイツは俺の何よりも大切なもんだ。だからアイツと仲良くする上でそのことだけは知られねぇようにしてほしい」
コウと妹に血のつながりがないってことは、繁華街を出入りする適当な男に釜かけるだけで余所者のあたしもすぐにすぐ知ることが出来た。
そんな簡単に部外者でも知れる情報だというのに、当の妹だけ知らないなんて……一体どれだけこの男は妹を囲っているんだ。ますますキモイ。
覚えてない、ねぇ。
あんたたちにとってはそれはそれほど大事なことじゃないかもしれないけれど、あたしにとってはいちばん残酷なことだ。

