狂い花は愛されたくて、



ーーブォオォン


いかにもな黒塗りの車が一台、ガードレールの脇に止まる。それだけで、来たって分かるのがすごいところね。




“わぁ〜コウサンたちだ”

“あぁ、今日はオ姫サンも一緒なんだね”





ここら辺にいるすべての人間の視線を集めて。あたしも含めて誰もがこの男の人生の脇役に過ぎないと思い知らされる圧倒的な存在感。





だけど、妹はその中心にいた。




「ーーそれでねぇ、お兄ちゃん〜!」

「あ?」

「アイカちゃん前見て、転んじゃう転んじゃう!!」

「やだ〜マオくん、私さすがにそんなにどんくさくなーーきゃっ」

「ホラ、言わんこっちゃない!!よそ見もダメッ」

「あはは、つまずいちゃった。お兄ちゃんありがとう」

「……あぁ」






ーーアイカ。それが引き取られたあと、姐さんから付けられた妹の新しい名前なんだって。誰からも愛される花になれるようにって。




幸せそうにコウの腕にしがみつく妹も、妹を愛おしげに見つめるコウの瞳も。







あたしが、

みんなみんなぶち壊してあげるから、待ってて……?






ーー今が人生で一番楽しいかもしれない。うふふふふ。もしかしたら、これがあたしの人生の最後の楽しいコトになるのかしら。