狂い花は愛されたくて、






コウが現れれば、あたしなんか空気の一部に成り下がる。あたしも、道を歩くコウたち御一行を見つめるその他大勢のひとりにすぎない。




繁華街にいるすべての者の視線を集めるのは、コウとーー







「ーーねぇお兄ちゃん〜?」

「あ?」

「アイカちゃん前見て、転んじゃう転んじゃう!!」

「やだ〜マオくん。さすがの私も、そんなにどんくさくなーーきゃっ」

「ホラ、言わんこっちゃない!!」

「あはは、つまずいちゃった。お兄ちゃんありがとう」

「……あぁ」







ーーアイカ。コウの妹の名前。





繁華街はいつも通りの賑やかで華やかな夜の世界。

けれどここいる人間のほとんどが、コウたち御一行の動向を憧れとゴシップを含んだ視線と声音で遠巻きに見ている。





『マオさんだー、今日もカッコイイ』
『えー、あたしは横のタクさん派だなぁ』
『今日は〇〇くんはいないのかなぁ?』
『本当だぁ、そっちに〇△くんならいるけどねぇ』






コウの取り巻きも謎の人気がある。けれど、あたしは興味がなくてーーー。



ぶっちゃけコウにも興味が無い。