「よぉ〜! マリアと……今話題の、」
「こんちはぁ、ユラだよぉ」
「ユラね、覚えた覚えた! んで、どうだったよぉ? コウさんとのワンナイト」
マリアちゃんにだけでなく、そのあとも顔見知りにで会う度にコウとの話を振られる。女の子だけじゃなくて、下心丸出しのチンピラみたいな男達にも。
「最高だったよぉ〜」
「ほぉーん、コウさんってあのビジュアルであっちも上手いわけぇ? ……てかさ、“ユアちゃん”、近くで見るといい身体してるねぇ」
ユアって誰よ。
全然覚えてねーじゃんこいつ。
どいつもこいつも“あたしに興味がある”わけではなくて、相手がコウだから興味があるんだろう。そんなのはわかってるけど。
まるで人気者になったかのように。
それを喜んでいるかのように。
あたしは振る舞う。
チンピラの手が、下心と一し共にあたしの身体を這った。
それを派手に拒否することもなければ、受け入れることもない。ただただ、ヘラヘラ笑って適当に受け流してるだけ。
ゲス下心に塗れた汚ぇ手だとは思うけど、あたしは“必要であれば”このチンピラと寝ることだって簡単に出来る。
必要であれば、だけれどね。
こうやって、バカの振りをしている方がこの繁華街には馴染むから。
適当に話を合わせながら、時間を潰す。
日が暮れた頃、お目当てのコウが現れた。

