灰皿にタバコを擦り付けた後の男が振り返るともう一度目が合う。潤んだ瞳は“おねだりの演技”で、あたしのお得意演技のひとつ。
近づいてきた男の顔、そのまま口付けと共に押し倒された。そうしてあたしはまたやってくる快感の波に身を委ねる。
どうやらその男の方もあたしの身体を気に入ったらしいーー。
情事のあと。男が煙草を吸い始めたのを確認して、今度は余韻を残さず、すぐに男に背を向けて洋服を着てベッドから出た。
常にその場限りの後腐れのない、都合のいい女を探していると聞いていた。
それならここは、性に奔放な軽い女を演じたままのあたしでいた方がいいと思って、あっさりと撤退する。つまりこれもあたしの演技。
これに引っかかるも引っかからないも、あなた次第よ?
「……待て」
男よりあっさりと先にホテルを出ていこうとしたあたしの腕をその男が掴む。ビクッと大袈裟に肩を震わせて男を振り返った。
あたしの演技にーーまんまと引っかかった。

