ポヨポヨな彼の正体を突き止めたいのですが?!

雨上がりの後って、花がすごくイキイキして見える。


元気ですよパワーのオーラがいつもより強い。


雨降って地固まるって聞いた事あるけど、何だっけ?


一方、私は雨降り続き。


モヤモヤを通り越して、雨の連続。


入学してすぐ、丸々と太った元カレに会い、左手骨折。


しかも、介抱してくれたのはその元カレで、どうやら私のストーカーっぽい。


もしかして同じ学部になったのも、偶然じゃなくて必然?


こういう場合、どうしたらいいんだろう。


ちゃんとしたストーカー被害の証拠もない。


これでは、きっと警察も取りあってくれない。


とにかく何か証拠がいる。


アイツの正体を暴いていくしかないんだけど…。


どうやって?


友達のフリするしかない?


「みうちゃん、どう? 困ってることある?」


幸い、いつも私の姿を見つけては話しかけてくる。


この状況をうまく使うしかなさそうね。


「特にないよ」


「それならいいけど。この前休んだ時の講義のノート、コピーしてきたよ。どうぞ」


「ありがと。あれ?」


「何? 何か不足?」


「いや、病院行ってる間の授業の分もあるから。だって、付き添いしてくれてたから、出てないでしょ?」


「友達がコピーさせてくれたからね。ちゃんと、了解もらってるよ」


「友達?」


「そう」


私より先に友達作ってたことに驚き、少なからずともショックだった。


「お礼いいたいから、今度紹介してよ」


「どうかな? とってもシャイなんだよ。でも聞いてみるね」


「うん、ぜひ。宙斗とその友達と私の3人で美味しいの食べに行こうよ」


「いいね。誘っておくよ」


「よろしくね」


「ご飯食べれてる?」


「うん、薬飲むと痛み止まるし、なんなら絶好調だよ」


「よかった」


宙斗がにっこり笑った。


ここで、私も笑えばさらに信頼関係が深まるはずだ。


やってみるか。


にっこり。


「みうちゃん、もしかして変なの食べた?」


最高の笑顔を見せたはずなのにめちゃくちゃ不審がっている。


「食べてません!」


「そう? 愛想笑いは似合わないよ」


バレてる。


今まで、不機嫌で対応してきたからやっぱり通用しないよね。


私って、やっぱり小細工とか無理だから、直接聞くしかないか。


「今、どこ住んでるの?」


「学校の寮だよ」


「そうなの? よく入れたね。私、抽選外れたんだよ」


「男子寮の方が多いんじゃないかな? 古い方は人気無いし」


「ここから遠いの?」


「バスで20分くらいかな」


「なかなか遠いんだね」


「近い方じゃない? もう一棟は電車通学になるとこだったよ?」


「そっちは、大学院寄りなのかもね」


「そうだね。みうちゃんはアパート借りるの大変だった?」


「ギリギリだったよ。最後の部屋だった」


「よかったね。みうちゃんの所、人気エリアだもんね」


「ってかさ! なんで、私の住んでるとこ何で知ってるの?」


聞いてやった!


バーンって、宙斗の顔に言葉を叩きつけてやったカンジ。


心臓が鳴り止まない。


さあ、どう答える?


仲田宙斗!


キョトンとしていた。


「受付する時、書類書かなきゃいけなくて、保険証預かったでしょ?」


あ、そうだ。


代わりに書いてくれていました。


「そうだったね。あの時はありがとう」


「それでソワソワしてたんだね。そうだよね。怖がらせてごめんね」


「そういえば、くしゃくしゃになったシールってどうしたの?」


「え?」


ソワソワしている。


明らかにおかしな態度だ。


「すごく大切にしてるよ」


「返して」


「もともと、僕のなんだからダメ。みうちゃんにはこっちをあげるから」


クリアフォルダーを差し出された。


開くと、それぞれのフォルダにピッチリと『シジョー』に出てくる高校生探偵7人と、シークレットシール(全員集合)の合計8枚のシールが入れられていた。


「シークレット、すごーい!!!」


「気に入った?」


激しく首を縦に振る。


いや、もう、ストーカー疑惑とかどうでもよくなってしまう。


「今度、一緒にチョコ買いに行こうね」


「うん、私も買う!」


「この辺のお店は売り切れてて、寮から遠いところとかに行かないと置いてないんだ」


「確かに。学生がみんな買っちゃうよね」


「もっとたくさん製造すればいいのにね」


「ネットで買おうとしたら、高額だったよ。オークションになってたりとか」


「そうなんだ。じゃあ、早めに行かないとだね。まだ置いてそうなお店見つけたら連絡するよ」


「私も探してみる」


「OK。じゃ、またね」


「うん、次の授業は別々なんだね」


「社会学だから」


「そっか。私は国際法」


「頑張ってね」


そう言うと、ドタドタと走って行ってしまった。


普通に話せる。


うん。


このくらいがちょうどいいなと思い始めてしまった。