人の重さってハンパない。
しかも2人分。
いや、それ以上か。
2人が立ち上がり、フッと楽になった。
魂も全部出て行ったんじゃないかってくらい体がふわふわと軽くなる。
「みうちゃん? 立てる?」
立とうと手を床につくと、激痛が走った。
やばい。
直感的にわかる。
この痛みは、いつものと違う。
「みうちゃん、手の角度! おかしいよ! 病院!」
宙斗に抱えられた。
姫抱っことか、イケメンにしてもらいたかった夢がガラガラと崩れていく。
恥ずかしさがマックスだ。
「ちょっと、やめてよ! 下ろして!」
「大丈夫。病院まですぐだから!」
「そんな問題じゃない!」
いや、現状すぐでした。
抱き抱えられたのは、タクシー乗り場まで。
病院までついてきてくれて。
タクシー代も払ってくれて。
診察室まで入ってきて(もちろん丁重にお断りして出てもらいましたが)、その後も支払いとか、ドリンクとか色々世話してくれましたよ。
あの宙斗に。
これが念願のイケメンなら、もっと感激してるはず……。
でも、ここまでしてくれてとても感謝してるのは確か。
実際、宙斗は元イケメンだし。
「みうちゃん、大学どうする? 家帰る?」
「大学戻る」
「骨折の時、熱出るかもしれないから、帰って安静にしていた方がいいよ」
「大丈夫、大丈夫、このくらい」
手のひらをヒラヒラ振ったら見事に激痛が走った。
「みうちゃん、無理しないで」
「単位、落とせないの」
「まだ、始まったばっかだよ。今、体壊してズルズル休んだら意味ないよ」
「わかったってば。今日は帰るから」
「ご飯どうする? 僕、作りに行こうか?」
「いいって。レンチンのストックちゃんとある」
「わかった。じゃあ、何かあったら呼んで。連絡先わかるよね?」
「知らない」
「削除したの?」
してない。
できなかった。
消さなきゃいけないってわかってたけど、どうしてもOKボタンが押せなくて。
キャンセルしての繰り返し。
「したわよ!」
素直じゃないな、私。
「みうちゃん、番号変わってる?」
首を横に振る。
すると、スマホを取り出しコールした。
ポケットの中で鳴る着信音は、宙斗の好きな曲『マリーゴールド』を奏でている。
「あれ? 削除したんだよな?」
「う、うん」
やばい、気付かれた?
「でも、着信音…」
「今、全部この着メロだから!」
「なんだ、そういう事か。びっくりした。僕の好きな曲、覚えててくれたって勘違いしちゃったよ」
「だよね。でも、ほら、私も好きだから」
「昔はそんな曲聞かないって」
「そ、そうだね。だけど、一度聞いたら、すごい気に入っちゃって!」
まずい。
あの時、未練いっぱいだったのバレる?
「だよね! いい曲だもん。今の着番が僕だなら、もしよかったらまた登録してよね」
「考えとく」
「そっか。考えとくか…」
宙斗が寂しげに笑った。
胸のあたりがズキッとする。
別にウソつかなくてもよかったよね?
今、私が彼に未練があったら、何か変わるのだろうか?
彼がひとかけらでも、私に未練があったら?
前みたいに緊張せず、対等に付き合えるのかな?
私、しっかりしてよ!
宙斗にちょっと優しくされたからって。
彼はもうイケメンじゃない。
私の夢は、イケメンとの恋なんだから!
「みうちゃん、タクシー来たよ。乗って」
「あ、ありがとう」
「運転手さん、白石町2丁目までよろしくお願いします。彼女、体調が悪いので少し急いでもらっていいですか?」
「承知しました」
最後まで、紳士だった。
「頼もしい彼氏さんだね」
と、運転手さん。
「彼氏じゃないです…」
しまったという表情をした運転手さんの顔がバックミラー越しに見えた。
少し気まずい空気になる。
しばらくは窓越しの外の景色をぼんやりと眺めていた。
元カレと友達になれるのかな?
ふと沸いた疑問。
そもそも、元カレなんていうのが間違ってる。
付き合ったようで付き合ってないわけだし。
昔も今も変わっていない。
ただの友達。
ただの顔見知り。
そうね、しっくりくる。
彼は誰にでも優しいから。
でも……。
「白石町着きました。ここからはどのように行けばよろしいですか?」
「そこのつきあたりを左折してしばらくいってコンビニの前で止めてください」
「承知しました」
ん?
ん?
気付いてはいけないことに気付いてしまったかもしれない。
宙斗に自分の住所を教えた記憶は一切ない。
どうして知ってるの?
急に全身が冷たくなるような気がした。
前も、私の指紋がついてるから宝物にするってキモいこと言ってた。
ストーカー?
今までで、どんな言葉よりも1番しっくりくるワードだった。
しかも2人分。
いや、それ以上か。
2人が立ち上がり、フッと楽になった。
魂も全部出て行ったんじゃないかってくらい体がふわふわと軽くなる。
「みうちゃん? 立てる?」
立とうと手を床につくと、激痛が走った。
やばい。
直感的にわかる。
この痛みは、いつものと違う。
「みうちゃん、手の角度! おかしいよ! 病院!」
宙斗に抱えられた。
姫抱っことか、イケメンにしてもらいたかった夢がガラガラと崩れていく。
恥ずかしさがマックスだ。
「ちょっと、やめてよ! 下ろして!」
「大丈夫。病院まですぐだから!」
「そんな問題じゃない!」
いや、現状すぐでした。
抱き抱えられたのは、タクシー乗り場まで。
病院までついてきてくれて。
タクシー代も払ってくれて。
診察室まで入ってきて(もちろん丁重にお断りして出てもらいましたが)、その後も支払いとか、ドリンクとか色々世話してくれましたよ。
あの宙斗に。
これが念願のイケメンなら、もっと感激してるはず……。
でも、ここまでしてくれてとても感謝してるのは確か。
実際、宙斗は元イケメンだし。
「みうちゃん、大学どうする? 家帰る?」
「大学戻る」
「骨折の時、熱出るかもしれないから、帰って安静にしていた方がいいよ」
「大丈夫、大丈夫、このくらい」
手のひらをヒラヒラ振ったら見事に激痛が走った。
「みうちゃん、無理しないで」
「単位、落とせないの」
「まだ、始まったばっかだよ。今、体壊してズルズル休んだら意味ないよ」
「わかったってば。今日は帰るから」
「ご飯どうする? 僕、作りに行こうか?」
「いいって。レンチンのストックちゃんとある」
「わかった。じゃあ、何かあったら呼んで。連絡先わかるよね?」
「知らない」
「削除したの?」
してない。
できなかった。
消さなきゃいけないってわかってたけど、どうしてもOKボタンが押せなくて。
キャンセルしての繰り返し。
「したわよ!」
素直じゃないな、私。
「みうちゃん、番号変わってる?」
首を横に振る。
すると、スマホを取り出しコールした。
ポケットの中で鳴る着信音は、宙斗の好きな曲『マリーゴールド』を奏でている。
「あれ? 削除したんだよな?」
「う、うん」
やばい、気付かれた?
「でも、着信音…」
「今、全部この着メロだから!」
「なんだ、そういう事か。びっくりした。僕の好きな曲、覚えててくれたって勘違いしちゃったよ」
「だよね。でも、ほら、私も好きだから」
「昔はそんな曲聞かないって」
「そ、そうだね。だけど、一度聞いたら、すごい気に入っちゃって!」
まずい。
あの時、未練いっぱいだったのバレる?
「だよね! いい曲だもん。今の着番が僕だなら、もしよかったらまた登録してよね」
「考えとく」
「そっか。考えとくか…」
宙斗が寂しげに笑った。
胸のあたりがズキッとする。
別にウソつかなくてもよかったよね?
今、私が彼に未練があったら、何か変わるのだろうか?
彼がひとかけらでも、私に未練があったら?
前みたいに緊張せず、対等に付き合えるのかな?
私、しっかりしてよ!
宙斗にちょっと優しくされたからって。
彼はもうイケメンじゃない。
私の夢は、イケメンとの恋なんだから!
「みうちゃん、タクシー来たよ。乗って」
「あ、ありがとう」
「運転手さん、白石町2丁目までよろしくお願いします。彼女、体調が悪いので少し急いでもらっていいですか?」
「承知しました」
最後まで、紳士だった。
「頼もしい彼氏さんだね」
と、運転手さん。
「彼氏じゃないです…」
しまったという表情をした運転手さんの顔がバックミラー越しに見えた。
少し気まずい空気になる。
しばらくは窓越しの外の景色をぼんやりと眺めていた。
元カレと友達になれるのかな?
ふと沸いた疑問。
そもそも、元カレなんていうのが間違ってる。
付き合ったようで付き合ってないわけだし。
昔も今も変わっていない。
ただの友達。
ただの顔見知り。
そうね、しっくりくる。
彼は誰にでも優しいから。
でも……。
「白石町着きました。ここからはどのように行けばよろしいですか?」
「そこのつきあたりを左折してしばらくいってコンビニの前で止めてください」
「承知しました」
ん?
ん?
気付いてはいけないことに気付いてしまったかもしれない。
宙斗に自分の住所を教えた記憶は一切ない。
どうして知ってるの?
急に全身が冷たくなるような気がした。
前も、私の指紋がついてるから宝物にするってキモいこと言ってた。
ストーカー?
今までで、どんな言葉よりも1番しっくりくるワードだった。


