桜が満開の日、雪が降った。
同じ。
そう、私の気持ちそのものだ。
新しい生活が始まり、希望に満ちあふれる一方で、心は冷たく寒い。
それもこれも、今日も私の横を並んで歩いている仲田宙斗のせい。
「最近のお菓子って、中身少なすぎない? 昨日袋開けたら、半分以上は空気だったよ」
「へー」
「みうちゃんは、チョコ好きだったよね。食べる?」
「いらない」
「もしかしてダイエットしてるの?」
「してない」
「じゃ、遠慮しなくていいよ。美味家さんと、アニメ『シジョー』のコラボチョコだよ?」
『シジョー』ですって?!
7人のイケメン高校探偵たちがそれぞれの長所を生かし未解決事件を次々と解決していく小説だ。
アニメになってたんだね。
必死で受験勉強してる間にすごいことになってたんだね。
こんなに人気になる前からの読者っていうだけでなんだか嬉しい。
そのうち映画にもなって、舞台、ミュージカルになって。
楽しみだ。
アニメ、今から見たらまた、どハマりしそうだな。
「見てこれ。付録のシール。シローだ」
「シロー?!」
宙斗が持っていたシールを奪い取った。
キラキラシールとか、めちゃくちゃカッコいい。
このシール、7人そろったら、もう最高かも。
シローは登場人物の中でも1番人気のイケメン。
頭脳明晰かつ、運動神経もかなりのもの。
バレーの全国大会でシローの通う高校が優勝したのも、シローが司令塔になっていたからだ。
とりあえず、バイトたくさんして、早く小説も読みなおさないとね。
「シール、欲しいの?」
「いや、別に」
「そう? じゃあ、捨てるはめになっちゃったな」
「シローを捨てるですって?!」
思わず、宙斗の胸ぐらを掴んでしまった。
「みうちゃん、クールダウン、クールダウン」
「捨てるの?」
「あげるよ、みうちゃんに!」
「いらないっていってるでしょ?」
「じゃ、シールも僕も離してよ」
「あ、ごめん」
慌ててパッと離すと、シールが地面に落ちた。
さっきまで、キラキラで輝いていたシールが、私のせいでシワシワになってしまった。
きっと、これは本当にゴミ箱行きだ。
宙斗がシールを拾う。
息を吹きかけ、丁寧に砂を落とし、シワを伸ばしている。
「何してるの?」
「このシール、僕が大切にする」
宙斗の行動に、胸が痛む。
ゴミにしようとしてたのは、私の方だ。
私が間違っていた。
「さっきは捨てる気満々だったじゃない」
「みうちゃんの言う通りだよ。いらないからってすぐ捨てるのよくない」
「言ってないよ、そんな事」
「『シローを捨てるですって?!』って言ったのはそういう事じゃないの?」
あ、違います。
シロー推しなだけです。
「ま、そんなとこかな?」
「やっぱり、みうちゃんってすごいよ」
「そう?」
イケメンじゃなくても、褒められるのは嬉しいもんだね。
顔のニヤニヤが止まらない。
宙斗のニヤニヤも止まらない。
ふにゃふにゃの顔で、ポケットからハンカチを取り出し、シールをまるでコワレモノを扱うように慎重に包んでいる。
「何してるの?」
「宝物だから、大切に保管するために」
「たかがシールでしょ? それ私に対しての嫌味?」
「違うよ! このシールはこの世に1枚しかないとても貴重なものなんだ」
「どこが? またそのチョコ買えばそのうち出るでしょ?」
「いや、出ない。というか、シールは7枚そろってるし、シローもダブりで5枚ある」
「あ、わかった! シークレットのシール? それ」
「ちなみに、シークレットも3枚持ってる」
「ガチファンなの? 『シジョー』の」
「そこまでじゃないと思うけど……」
「めっちゃチョコ買ってるじゃない」
「それは、美味しいからであって断じてシール目的ではない!!」
宙斗が握りこぶしをつくり、力説した。
「はい、本音、出た。見せて、シール」
「持ち歩いてないよ。家にあるんだ」
「欲しい。シール全部欲しい!」
「いいよ。みうちゃんにあげる」
宙斗の目の前に手のひらを出す。
「今、持ってないんだってば」
「それ。くちゃくちゃになったヤツ」
「無理! これはあげない。僕の宝物にする」
「そう言って、どうせ捨てるでしょ?」
「捨てない!」
「『シジョー』読んだ事ある?」
「ないよ。ないけど、これは別!」
「ちょうだい!」
「だって、これは引っ張りあって、みうちゃんの指紋と汗がついてるんだよ!! 金庫に入れて保管する!!」
ね、なんか気持ちの悪いこと言ってない?
他にも保管してそうで、考えただけでゾッとした。
「それ、捨てる!」
思わず叫んだ。
すると、ヤツはものすごい形相をして、一目散に逃げていった。
追いかけようか迷っている間に、もう宙斗の姿は無い。
ぽっちゃりで素早いとか、チートやん…と思いつつ、チョコもシールももらい損ねたことをちょっぴり悔やんだ。
同じ。
そう、私の気持ちそのものだ。
新しい生活が始まり、希望に満ちあふれる一方で、心は冷たく寒い。
それもこれも、今日も私の横を並んで歩いている仲田宙斗のせい。
「最近のお菓子って、中身少なすぎない? 昨日袋開けたら、半分以上は空気だったよ」
「へー」
「みうちゃんは、チョコ好きだったよね。食べる?」
「いらない」
「もしかしてダイエットしてるの?」
「してない」
「じゃ、遠慮しなくていいよ。美味家さんと、アニメ『シジョー』のコラボチョコだよ?」
『シジョー』ですって?!
7人のイケメン高校探偵たちがそれぞれの長所を生かし未解決事件を次々と解決していく小説だ。
アニメになってたんだね。
必死で受験勉強してる間にすごいことになってたんだね。
こんなに人気になる前からの読者っていうだけでなんだか嬉しい。
そのうち映画にもなって、舞台、ミュージカルになって。
楽しみだ。
アニメ、今から見たらまた、どハマりしそうだな。
「見てこれ。付録のシール。シローだ」
「シロー?!」
宙斗が持っていたシールを奪い取った。
キラキラシールとか、めちゃくちゃカッコいい。
このシール、7人そろったら、もう最高かも。
シローは登場人物の中でも1番人気のイケメン。
頭脳明晰かつ、運動神経もかなりのもの。
バレーの全国大会でシローの通う高校が優勝したのも、シローが司令塔になっていたからだ。
とりあえず、バイトたくさんして、早く小説も読みなおさないとね。
「シール、欲しいの?」
「いや、別に」
「そう? じゃあ、捨てるはめになっちゃったな」
「シローを捨てるですって?!」
思わず、宙斗の胸ぐらを掴んでしまった。
「みうちゃん、クールダウン、クールダウン」
「捨てるの?」
「あげるよ、みうちゃんに!」
「いらないっていってるでしょ?」
「じゃ、シールも僕も離してよ」
「あ、ごめん」
慌ててパッと離すと、シールが地面に落ちた。
さっきまで、キラキラで輝いていたシールが、私のせいでシワシワになってしまった。
きっと、これは本当にゴミ箱行きだ。
宙斗がシールを拾う。
息を吹きかけ、丁寧に砂を落とし、シワを伸ばしている。
「何してるの?」
「このシール、僕が大切にする」
宙斗の行動に、胸が痛む。
ゴミにしようとしてたのは、私の方だ。
私が間違っていた。
「さっきは捨てる気満々だったじゃない」
「みうちゃんの言う通りだよ。いらないからってすぐ捨てるのよくない」
「言ってないよ、そんな事」
「『シローを捨てるですって?!』って言ったのはそういう事じゃないの?」
あ、違います。
シロー推しなだけです。
「ま、そんなとこかな?」
「やっぱり、みうちゃんってすごいよ」
「そう?」
イケメンじゃなくても、褒められるのは嬉しいもんだね。
顔のニヤニヤが止まらない。
宙斗のニヤニヤも止まらない。
ふにゃふにゃの顔で、ポケットからハンカチを取り出し、シールをまるでコワレモノを扱うように慎重に包んでいる。
「何してるの?」
「宝物だから、大切に保管するために」
「たかがシールでしょ? それ私に対しての嫌味?」
「違うよ! このシールはこの世に1枚しかないとても貴重なものなんだ」
「どこが? またそのチョコ買えばそのうち出るでしょ?」
「いや、出ない。というか、シールは7枚そろってるし、シローもダブりで5枚ある」
「あ、わかった! シークレットのシール? それ」
「ちなみに、シークレットも3枚持ってる」
「ガチファンなの? 『シジョー』の」
「そこまでじゃないと思うけど……」
「めっちゃチョコ買ってるじゃない」
「それは、美味しいからであって断じてシール目的ではない!!」
宙斗が握りこぶしをつくり、力説した。
「はい、本音、出た。見せて、シール」
「持ち歩いてないよ。家にあるんだ」
「欲しい。シール全部欲しい!」
「いいよ。みうちゃんにあげる」
宙斗の目の前に手のひらを出す。
「今、持ってないんだってば」
「それ。くちゃくちゃになったヤツ」
「無理! これはあげない。僕の宝物にする」
「そう言って、どうせ捨てるでしょ?」
「捨てない!」
「『シジョー』読んだ事ある?」
「ないよ。ないけど、これは別!」
「ちょうだい!」
「だって、これは引っ張りあって、みうちゃんの指紋と汗がついてるんだよ!! 金庫に入れて保管する!!」
ね、なんか気持ちの悪いこと言ってない?
他にも保管してそうで、考えただけでゾッとした。
「それ、捨てる!」
思わず叫んだ。
すると、ヤツはものすごい形相をして、一目散に逃げていった。
追いかけようか迷っている間に、もう宙斗の姿は無い。
ぽっちゃりで素早いとか、チートやん…と思いつつ、チョコもシールももらい損ねたことをちょっぴり悔やんだ。


