ポヨポヨな彼の正体を突き止めたいのですが?!

誰かにお願いする時、簡単に頼める人とそうではない人がいる。



私は後者だ。



愛想よくお願いなんてできない。



今こそ危機だ。



宙斗のお願い事は、私の予想を軽く飛び越えていた。



びっしりと書かれているリストを見せられた時は驚き、結局何個書かれていたのか考えるだけでも怖かった。



約束はその中から一つ。



彼なりに厳選して選んだのは、かなり変なお願い。



私なら、いつもより高いお菓子を要求したり、旅行をねだったり。



自分が満足できるような、ありきたりなものをお願いするかも。



今回は相手が悪い。



あの宙斗だ。



ストレートなお願いがくるはずないのだ。



「決めたよ、みゆちゃんにお願いされたい」



「は?」



「だなら、みゆちゃんのお願いを聞く事が僕の願いだよ」




「それって、なんのお願いにもならなくない?」



「なるよ! みうちゃんに可愛くお願いされたら…って思っただけで…かやりヤバい」



「か、可愛く?」



「語弊があったね。みうちゃんはいつも可愛いよ!」



「なにそれ」



「さあ、僕にお願いしてよ」



「無いわよ!!」



「何でもいいんだよ! とにかく、お願いして!」



「違うでしょ! お願いするのは宙斗でしょ?!」



「そのお願いが、みゆちゃんにお願いされたいって事なの!!」



ダメだ。



これはニワトリが先か卵が先かと一緒だ。



こうなった宙斗は手強い。



何を言っても聞き入れてもらえないだろう。



疲れる前にさっさとこっちがお願いした方がよさそう。



とはいえ、可愛くお願いなどできるわけない。



簡単なお願いでいい。



そう簡単なお願いで。



「じゃあ…」



「待って、待って! 心の準備するから」



そう言うと宙斗は深呼吸をした。