ポヨポヨな彼の正体を突き止めたいのですが?!

暑い。



ものすごく暑い。



立っているだけで汗が吹き出す。



梅雨に入ったばかりだとニュースで言っていたにもかかわらず、雨はどこへいったのだろう。



こんなに日差しが強ければ傘が必須だ。



結局雨が降ろうが、晴れだろうが傘が手放せない毎日。



目の前の2人も傘をさして楽しく歩いている。



こんな暑いのに、なぜこんなに楽しそうなのか?



後ろからついて行く私の気持ちはどこに行くんだろう?



「みうちゃん、遅れないで。早く早く」



目の前の2人とは、もちろん宙斗とランくんだ。



せっかくの休みを部屋でクーラーの下、涼しくダラダラと過ごすつもりだったのに、呼び出されてしまった。



もちろん、適当な理由をつけて断ってもよかったのだが、宙斗たちがバイト代払ってくれると言うのでお供することにした。



彼らが目指しているのは、県郊外にある『おとぎの村の国』というところだ。



日本の歴史ある建物を残そうと山の中腹に開園された博物館的な施設。



江戸、明治、大正時代など老朽化などで壊されそうな古い時代の建物をどんどん移築していた。



それだけでは集客力が無く、資金繰りに困っていた館長は、自身が考え出した謎解きイベントをした。



それが面白いと大変話題になる。



今では謎解きのためにパビリオンを建築し、歴史を伝える建物たちはそれに飲み込まれた。



名前も『歴史村』から『おとぎの村の国』とまで変えてしまった。



宙斗たちは、そこで行われている『シジョーのレイニーミステリー』というのに参加する。



どんなイベントか、それは同人即売会だ。



全国から、『シジョー』ファンが自作の自慢の本を持ち寄って即売会をする。



そう、私はその売り子をする。



「みうちゃん、早く」



坂を平気で駆け上がる2人に何とかついて行く。



体力の限界をかんじながらも、必死で追いかけた。



少し、道が開けてきている。



広大な園の端っこのほうだろう。



木々の間から、建物がチラチラと見え隠れしている。



園外から見える窓ガラスは、ステンドグラスになっており光が反射してとても綺麗だ。



苦労して汗をかいてでも、この景色を見てしまうと来てよかったと思う。



正面入り口には、開園前にもかかわらず多くの人がひしめいていた。



その側を2人が颯爽と通り過ぎて行く。



「ねぇ、ちょっと。並ばないの?」



「この列は一般入場だから。僕たちは先に入って準備しないといけないからこっちだよ。離れないでね」



「みんながこっち見てる」



「そんな事ないって。みうちゃん、気のせいだよ」



「だって、特別入場の人なんて他にいなさそうだよ?」



列に並んでいる人の中で、明らかにブース参加者と思われる人がいた。



4箱のダンボール箱をカートに載せて待っている。



「ほら、見て。向こうにもダンボール積んでる人いるよ?」



「いいから、いいから」



宙斗に引っ張られてどんどん列の先頭に来てしまった。



それと同時に中からSPのような黒服の怖そうな人が5人も出てきた。