ポヨポヨな彼の正体を突き止めたいのですが?!

休みの日って、どうしてこんなにキラキラしてるんだろう?


何時に起きてもいい。


時間が無限にあるみたいな錯覚。


フワフワの布団で全身包まれて、これ以上ない幸せだ。


それをブレイクするのは、間の悪いスマホのコール。


これはきっとヤツだ。


「もしもし」


「みう?」


「ママなの?!」


「そうよ。いったい誰と勘違いしてるの?」


「いや、えーっと」


「何? もう彼氏できたわけ?」


「できるわけないよ。まだ、友達もいないし」


「そうなの? まだ始まったばかりだからしょうがないわよね」


「で、どうしたの?」


「どうしたもこうしたも、全然連絡くれないから心配したじゃない。あんたの好きなお菓子とか色々送ったからね。今日着くわよ」


「ありがとう」


「じゃ、風邪ひかないように気をつけるのよ」


「はーい」


思ってた電話と違って、ちょっとホッとする。


あらら、すぐまたコールだ。


「今度は何?」


「え? 今度って?」


あ、しまった。


ママだと思ってすぐ出てしまった。


取りたくない相手の声はすぐわかる。


せっかくの休日なのに!


今日くらいは聞きたくなかったよ。


「さっき誰かと話してたの?」


「ま、そんなとこ」


「もしかして、彼氏さん?」


「(棒読みで)そうそう」


「そうなの?! ごめん、邪魔しちゃった?」


「いいよ。もう話終わったから。それで、何か用?」


「あの、『シジョー』のチョコ、売ってるとこ見つけたけど、どうする? 買っとく?」


「あるの?!」


自分の周りのお店を10軒以上探したけど、どこも売り切れだった。


「待って、すぐそこに行く!」


「でも来るまでに売れちゃうかも」


「カゴに入れて確保しておいて!」


「わかった。場所、メッセージで送るね」


「お願いします!」


不思議と力が湧いてくる。


さっきまでの憂鬱がウソのようだ。


慌てて着替えて、家を飛びだす。


着いた先は電車とバスで2時間もかかった。


古びたショッピングセンターだが、どことなく威厳がある。


中に入ると、昔から地元に愛されている感じがにじみ出ていた。


掲示されているチラシには、地域で最安値や、入荷お待たせしましたなど、いろんなメッセージが書かれている。


「みうちゃん!」


聞き飽きた声がした。


先に私を見つけるのは、いつも宙斗だ。


「ごめん。接続あんまよくなくて」


「大丈夫。こっちこっち」


連れて行かれた先は、ワゴンセールの所。


「ここにあったんだ」


「無い…」


「全部カゴに入れたからね」


宙斗が突き出したカゴには、山盛りの『シジョー』のチョコの袋。


「すごっ! でも、陳列してあるの見たかったな」


「それなら」


袋を1つカゴに戻した。


「うーん、なんか違う」


「まあ、そう言わずに。何個買うの?」


「5袋」


「じゃ、残りは戻すよ?」


「やっぱ、8袋」


「被るかもしれないよ?」


「いいの。残り、買ったら?」


「まあ、買ってもいいんだけどね。最近、こればかりだったから、別の食べたくて」


「そっか。残念」


「ちなみに、半額になってるよ」


「え?! 全部買う!!」


「だよね」


ワゴンに戻した一袋を取ろうとしたら、ちびっこがワゴンに突進してきた。


「チョコあるっ!! ママ、これ!」


あっという間に、取られてしまった。


山盛りのカゴも、そのちびっこに見つかり、指をくわえてじっと見ている。


「もっと欲しい?」


「うん。いいの?」


「いいよ」


すると、ガサガサとカゴをあさり、両腕いっぱいに抱え、あっという間に半分持っていかれてしまった。


「おねーちゃん、ありがとね!」


せっかく買う気になっていたが、そのちびっこの元気にあてられて戦意喪失。


「なんか、すごいね。今のちびっこって。宙斗もあんなだった?」


「かもね。でも、みうちゃん、よかったの?」


心配そうにのぞきこまれた。


「まあね。シールは全種類もらったし。実際に売られてるとこ目に焼き付けられたし」


「でも、もっとシール欲しかったんじゃないの?」


「いいの、いいの。きっとあの子も喜んでるはずだから」


「みうちゃん、全然変わってない。やっばりすごいや」


「何が?」


「優しいとこ」


嬉しそうに笑っている宙斗の奥に、何か温かいものを感じた。


胸の奥がきゅっとしめつけられる。


苦いけど甘くて美味しいチョコみたいに。


「じゃ、また明日ね」


そう言うと、さっさと帰ってしまった。


そっか、デートじゃないもんね。


いやいや、あんなプニプニくんとデートなんて絶対ありえないから!


私の夢はイケメンと付き合うことなんだってば!


家に帰ると、玄関前に置き配の段ボールがあった。


「どれどれ…」


早速開ける。


のけぞる。


二度見する。


そこには、『シジョー』のチョコが敷き詰められていた。


いや、さすが、ツボを押さえていますわ。


我が母君よ。