「先生…。」

『何だ!?』

「…私…地元から通える所じゃないと親が許さないと思います。ソレにっ…」

『…ソレに?』

「…私、稜杏大学に行きたいんです!」





…行かなくても良かった





将来の夢も希望も無い

就職先も

結婚相手も

俺達が決めると

親から言われた事…

ソレからも逃げたかった





必死で努力している人達ばかりの

東京の有名美大に行っても…

挫折して終わる事も

目に見えてたから





挑戦する事なんて

コノ時の私には…

全く無い考えだった





(先生っ…勘弁して…。)





暫く沈黙が続いた後…

柏木先生が口を開いた





『…今度、保護者面談があるだろ?ソレが終わってから、またココに来なさい。』

「へっ…!?」

『将来が決まる大切な時期だからだよ!きちんとご両親とも話す必要がある。』





「…分かりました。」





(将来ねー…)

(てか、何で両親とキチンと話す必要があるの?…私の人生なのに…。)





ソレからどうやって

家に帰ったか…





正直…

覚えてない





電車の灯りが見えて

乗った事は覚えてる





家族の不仲

自分の将来

今の彼氏との事

大学進学の事

今の環境の中での…





私の居場所と

生きる意味…





ずっとソノ疑問が…

頭の中で繰り返されていた