でもこの女が私に対して怒ったりするのは、“あの人”絡みで。
“あの人”の前だと、母親はしおらしくなる。
初めて会ったのは……9歳の頃かな。
親戚の集まりで。
『扶美。よく来たね』
“あの人”は優しく笑い、母親の名を読んだ。
その瞬間、あの女は見たことないような表情を浮かべた。
まるで、“あの人”を慕ってるかのように。
『兄様っ!』
あの女は“あの人”にぎゅっと抱きついた。
私は、あの女に抱きしめられたことが一回もない。
だけど、それでいい。
『君が希空かな。俺は君のお母さんのお兄ちゃんだよ』
ああ……あの女の兄なのか。
私は幼いながらに聡かった。
母親が何してるのか、理解していたから。
“あの人”の前だと、母親はしおらしくなる。
初めて会ったのは……9歳の頃かな。
親戚の集まりで。
『扶美。よく来たね』
“あの人”は優しく笑い、母親の名を読んだ。
その瞬間、あの女は見たことないような表情を浮かべた。
まるで、“あの人”を慕ってるかのように。
『兄様っ!』
あの女は“あの人”にぎゅっと抱きついた。
私は、あの女に抱きしめられたことが一回もない。
だけど、それでいい。
『君が希空かな。俺は君のお母さんのお兄ちゃんだよ』
ああ……あの女の兄なのか。
私は幼いながらに聡かった。
母親が何してるのか、理解していたから。

