地の果てに咲く花

楠見 雷稀(くすみらいき)。

厳密に言えば、この人と血のつながりなんてないんだ。

それでも私は、この人を兄と呼び続ける。

なんて虚しくて、滑稽なんだろう。

「……雷稀兄の言う通り、疲れてるのかも……。今日はもう寝るね」

「ええ〜?桜駒ちゃん大丈夫?」

桜駒ちゃん。

昔はそんな呼び方じゃなかったのにな……。

「……大丈夫だよ。おやすみなさい」

もうこれ以上、この空間には居れない。

ここは、生き地獄だよ……。

愛する家族がいるのに、家族だと思えない。

階段を登り、2階へ上がると角を曲がるところで誰かとぶつかった。

「わっ」

「あ、ごめ」

私の無事を心配してくるのは6個上の兄の魁眞だ。

「…兄さん」

「ん?」

私は兄さんがあまり好きではない。

決して、何かされたわけではないけれど。

兄さんとは、半分だけ血が繋がっている。