確かに妹は、俺よりも純粋で穢れを知らなくて、可哀想なくらい無知で。
だから傷つけたくなかった。
でも。本当はそんなの言い訳で。
本当のこと言って、妹に嫌われたくなかった。
『──そんなことないよ』
俺はそう言うことしかできなかった。
でも、桜駒はわかってたんだろうな。
父さんに愛されてないって。
それなのに桜駒は笑い続けた。
何も理解してないかのように、笑い続けたんだ。
「お兄ちゃーん」
秋真に抱きついてた桜駒が笑いながら俺のことを呼んだ。
かつて、心からではなく義務的に笑っていた桜駒が。
今は幸せそうに笑顔を浮かべる。
そんな桜駒に小さく微笑んだ。
それでも記憶の中の妹は、罪なほどに笑っていた──。

