地の果てに咲く花

数年ぶりに聞いたその声。

ああ、全然変わってない。

優しげな瞳も。声も。身長も。

あの頃の、桜駒のまま。

「桜駒……」

「お兄ちゃん……っ!」

駆け寄ってきた妹を強く抱きしめた。

「会いたかった……っ、会いたかったよお兄ちゃん……っ!」

泣きながら言う妹の表情は、旅立つ時と同じなのに。

全然違うんだ。

桜駒はちゃんと頑張った。

辛い治療に耐えて。

その辛さは俺なんかには到底わからないだろうけど。

ちゃんと桜駒は帰ってきた。

約束通り、帰ってきたんだ。

「おかえり……っ、おかえり、桜駒」

ぎゅっと抱きしめて、桜駒の瞳を見る。

あの頃。幼いとき、言えなかった言葉を。

幼い頃、愛する双子の妹に言えなかった。

ずっと言いたかったその言葉。

「桜駒。俺はお前のこと──愛してるよ」

俺は、自分の中に蝕む幼い頃の自分がいなくなったことを感じ、もう一度桜駒を抱きしめた。