いつも誰かが周りにいてくれて。
俺は笑っていることができた。
でもやっぱり、桜駒は生死の境にいたから。
愛する双子の妹が、死と隣り合わせにいると考えるだけで怖かった。
「……桜駒ねーちゃんはどんな人なの?」
秋真が桜駒のことを聞いてきたのは初めてで、少し驚く。
いつも気を使ってか、桜駒のことを聞いてきたことはなかった。
「……桜駒は、いつも笑顔で優しくて、周りのことを考えていて。だけど、他の人を愛せない自分を責める──そんな優しい子なんだよ」
愛する妹を、本当に愛せなかった過去の自分。
そんな自分を振り切るように、俺はここにいる。
「……聖杜、秋真。もう来るよ」
希空にそう言われ、かつてないほど心臓が暴れだす。
なんて言えば良い?
成長した桜駒に、なんて言葉を──。
「お兄、ちゃん──……?」
カツン、と靴の音が響いたあと、桜駒の声が聞こえた。

