……これくらいで、俺が言うこと聞くとでも思ってんの?
俺が今まで、どれだけ父さんに叩かれてきたかも知らないで。
「……なあ、秋真はどうしたい」
そう、父さんが尋ねてきて目を見開く。
絶対に、そんなこと聞かないはず……なのに。
実際に、不倫女は驚いて父さんを見た。
「は⁉︎隆までどうしたわけ⁉︎秋真はあたしたちの子なのよ⁉︎」
だけど、父さんはそんな言葉を無視して秋真を見る。
「ぼくは……にいちゃんといたい……」
女は実の息子にそう言われて。
力が抜けたかのように膝から崩れ落ちた。
父さんはもうこっちを見ようとせず、ただ静かに言った。
「……早くいけ」
俺は最低限のものをまとめると、秋真を連れて外に出た。
そこには車に乗ってる兄さんがいて。
その車に秋真と一緒に乗る。
「……ちゃんと蹴りはつけられたか?」
──俺がもう少し、母さんと父さんに寄り添えてたら。
違う未来もあったのかもしれない。
でも、俺がこの選択を選んだから。
「……うん」
俺は長かった未練にケジメをつけた。

