父さんが興味なさげに言い、酒を飲む。
「何してたのよ」
女が顔を顰めてテレビをつけた。
「にいちゃん……」
駆け寄ってきた秋真を軽く受け止める。
俺は、言わなければいけない。
二人に向かって頭を下げる。
「──今まで、育ててくれてありがとうございました」
俺の言葉に、父さんたちは目を見開けた。
『もし、聖杜がよかったら──楠見家の息子にならない……?』
本当は、すごく悩んだんだ。
俺なんかが、楠見家の子供になっていいのかって。
だけど。
「俺は……楠見家の息子になりたいです」
もし、俺を受け入れてくれるなら。
俺はずっと、母さんについて行きたかった。

