一度でいいから『愛してる』って言ってほしいって。
俺が、少しでも母さんに寄り添えてたら。
母さんにこんな思いさせずに済んだかもなのに。
「……母さん、ごめん……」
母さんに近づいて母さんを抱きしめた。
「ずっと愛してくれてないなんて思って……ごめん……」
母さんはただ不器用なだけだった。
愛してない男との間にできた子供を愛そうと必死で。
そんな、不器用な人だった。
「ねえ……聖杜」
母さんは俺の頭を撫でながら抱きしめると、俺の瞳を見た。
「もし、聖杜がよかったら──」
◇
兄さんに家に送ってもらい、中へ入る。
大人物の靴が二つあることから、父さんとあの女が帰ってきてるらしい。
「遅かったな」

