俺が冗談言うと母さんは笑ってくれるけど、あの時みたいに心の底から笑ってくれることはなかった。
中3の6月くらいだった気がする。
父さんが母さんと結婚するって。
俺的には嬉しかったし、雷稀もいいって言ったから賛成だよって言った。
夏休みになる前、母さんは一人の女の子を連れて俺たちの家に住むことになった。
その女の子は、母さんの後ろにすっぽり隠れて。
ちらっと見えた顔は母さんにそっくりだったから。
昔、お腹の中にいた妹だってわかった。
異父妹の桜駒は、あんまり笑ってくれなかった。
この子は、来たくなかったんだなって。
『……本当はね、聖杜も連れてきたかった』
母さんが顔を俯かせて俺に言った。
『桜駒と、一緒に居させてあげたかった……っ』
その言葉で、弟の名前は聖杜って言うんだって知った。
妹は、聖杜といれないから笑わないって。
だから……代わりになんてなれないけど、代わりになってあげたいって思った。

