この子はまだ6つだったのに。
母さんを奪ってしまった。
まだきっと、母親の温もりが必要だったはずなのに。
またシーンとなってしまったのが気まずくてうーんと唸る。
生まれてこんなに気を遣ったことない……。
「……楠見家での、母さんはどんな人ですか」
そう思ってると、聖杜から話しかけてくれて少し驚く。
母さんか……。
「……俺が母さんに初めて会ったのは、小学生になったばかりの頃だった」
そう。あれは、4月の終わり頃。
まだ小学生なりたての時。
父さんが会わせたい人がいるって言った。
お洒落なカフェに連れて行かれると胸元まである黒髪をふわふわさせてる優しそうな女の人だった。
『魁眞』
父さんにお母さんだよって告げられて。
驚きよりも、母さんに会えた嬉しさが大きかった。
でも……。

