「母、さん......」
数年ぶりに見た、実の母親。
最後に会ったのは幼い頃で、記憶が朧気だった。
「....聖社、」
紫悠のその声でハッとし、母さんの隣に居る少女に視線を向けた。
「.....さこま、」
「おにいちゃん......」
桜駒は泣きながら俺に抱きついた。
「....何で?何で来ちゃったの......?私は、お兄ちゃんに会いたくなかったのに.....っ!」
会いたくないと言いながら、泣いて抱きつく。
言葉と行動が一致してない。
「……うん、ごめん」
謝って強く抱きしめると、桜駒は泣いた。
怒って泣いたんだ。
怒りを、悲しみをぶつけるかのように。
あれほど感情を出さずに、只々静かに笑っていた桜駒が。

