地の果てに咲く花

「早くしないと、間に合わないよ」

その言葉に少し恐怖を感じ、慌てて封筒を開けた。

【 お兄ちゃんへ
 お元気にお過ごしでしょうか。まあ、こないだ会ったばっかりだけどね。
 私は、お兄ちゃんに言わなければいけないことが二つあります。
 まず一つ目。「拡張型心筋症」という、重い病気になりました。
 ドナーが見つからない限り、五年以内に死んでしまうそうです。 】


“死”と言う文字を見た瞬間、俺は絶望した。

だけど……だけど、読まないと……。


【 そして二つ目。私はパパの提案でアメリカで治療を受けることになりました。
 旅立つのは今日の夜です。
 お兄ちゃんがこの手紙を読んでる頃には、きっと私はアメリカにいるくらいでしょうか。
 希空を怒らないでね。頼んだのは私だから。
 お兄ちゃんに会ったら、きっと私はアメリカに行くのが怖くなります。
 もしかしたら、もう、会えないんじゃんないかって。
 私は世界で一番、お兄ちゃんが大好きでした。ううん。今も大好き。
 お父さんに殴られそうな時、お母さんに否定された時、いつも守ってくれたのはお兄ちゃんです。
 お兄ちゃんは私の世界一自慢のお兄ちゃんです。
 だから泣かないで?私は帰ってきます。
 治って、今度はちゃんと、お兄ちゃんと話せるように。
 私は絶対、帰ってくるからね。
 ばいばい。                    
                             楠見桜駒 11.16 】


「っ……!」