帰りは帰りで、また私が掴まないから、早く早くと急かされた。
また、心臓がはやいだの言ってきたから、二度目の頭突き。
道中は行きも帰りも同じことをしていたと思う。
「──ドライブサンキュ。貴公子」
バイクからおりてヘルメットを返せば、貴公子はニッと口角をあげた。
「ああ、たまにはいいだろ?旅館のことも、花のこともなしにぶらつくのも。お前がいたから、今日はいつもより充実したわ」
「……私も、楽しかった。から、ほんとサンキュな。帰り、気をつけて」
「おう。じゃあ、また教室でな」
──なんだろ、ずいぶんと今日は貴公子の機嫌が良かったような。
良いことでもあったのとか?



