なんとか意を決して貴公子に腕を回し、ドライブへ。
意外にも安全運転で、信号もちゃんと止まるタイプみたい。
どこに向かってるのか聞いたけど、てきとう、と言われ後ろから頭突きをかましてやった。
「つか、心臓うるさくね?」
「……っ!?」
「あ、おい!!離すなって!」
赤信号で止まった時に言われ、つい手を離した私に、貴公子に手を掴まれた。
……今のは貴公子のせい。
本当にただただ、バイクを走らせるだけで、休憩といい香りがしていたパン屋に寄った。
杏奈の家とはまた違う商品があるけど、少しお高め。その分美味しいといいな。
「中で食えるし、いいとこ見っけたな」
「だね。貴公子は何にするの?」
「俺はがっつり食うぜ?お前は?」
「私もがっつりいきたい気分かも……」
それから、トレーを手にする貴公子にあれとってこれとって、と食べたいのをのせてもらい、会計を済ませ席についた。
「いただきます、っと」
「ねぇ、払うよ私も。奢られるようなことしてないし」
「誘ったのは俺だからいーんだよ」
パンにかぶりつく貴公子は首を振る。
「んな高価なものじゃあるまいし。デートは男が奢るもんだ」
「ゴホッ……!!」
「はぁ?なんだよ急に」
無料の水を飲みかけて、思いきりむせった。
「で、デートっ?これ……」
胸を叩きながら尋ねた。
全然そんなつもりなかったから、自分でもひくくらいの動揺っぷり。
「そのつもり」
「……そ、そうか」
これは決してデートじゃない!と頭の中では全否定したのに、受け入れてしまった。
それから、パンの話をしてたけど、いまいち何を答えたかうろ覚え──



