らしくしよ、恋ってやつを


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──目を覚ますと同時に、携帯が鳴ってることに気付き、手探りで探した携帯を見て、ぎょっとした。
唐突にきた連絡に、思わず二度見するも、ディスプレイには【鼓椿冴】と表示されていて。

「え、何」

躊躇いながらも電話に出れば、開口一番に

『明日ヒマ?』とのこと。
明日は華道の教室ではないし、土日ではない。祝日で旅館の手伝いはなく、確かに暇だけど。

『……おいバカ聞いてんのか?』
「バカじゃありません、聞こえてますー何?華道の特別レッスンとかならお断りだけど?」
『はぁ?なんで俺がそんなことしてやんなきゃならねぇんだよ』

じゃあ何さ。

遊ぼうと、誘いの電話ってこと?──なんて思うも、この貴公子に限ってそんなことはないだろう。
ましてや私と休日を過ごそうだなんて、華道の場で十分嫌気がさしていると思われるのに、ありえない。

「だったらなんなの?」
『あーお前は、ヒマかそうじゃねぇのか答えりゃいいんだよ。つかもうヒマだな。ヒマってことにするぞいいな?』

なんて強引。
そのまま時間だけを告げられ、切られた電話。