「どした?」
貴公子の方が先にこちらへ来てしまい、貴公子と談笑していた男の子が首を傾げた。
「なに、椿冴知り合いなの?」
「まぁな。……んで用事?」
「こ、これ……資料。届けに来ただけ」
資料の入ったかごを差し出せば、貴公子は『ふうん』と、受け取った。
「さんきゅ。後で配っとくわ」
「お……はい。お願いします。では……」
危ない危ない。貴公子と話してた癖か『おう』って答えそうになった。
もうこの姿での失態はさけたいため、私は杏奈の背中を押しながら自身の教室へと向かった。
そして教室に着けば、
「……なにその顔」
表情筋が緩みきる杏奈の顔が私を見つめてきて。
「だって、なんかいい雰囲気じゃない!?」
……一体どこをどう見たらそんなこと感じるのか。微塵も理解できない。



