桜大の診察が終わると葉琉が私と目を合わせた。そして私が聞き取りやすいようにゆっくり唇を動かす。
「喉が少し赤いですが、10日ほど飲み薬を飲めば良くなると思います。症状が改善されなかったり熱がでたらまた受診してください」
「先生、ありがとうございました」
「えっと……はい」
葉琉は恥ずかしそうに首の後ろに手のひらを当てた。照れた時にする葉琉のクセだ。
そして葉琉は看護師にカルテを渡し看護師が別室へと移動するのを見て私は桜大の手をとり、ドアノブに手をかけた。
「待って」
その声に振り返れば、葉琉が困ったように眉を下げている。
「ごめん……最後まで他人行儀もなんだかなって……元気そうでよかった」
「私も……えっと……先生じゃなくて……葉琉が元気そうで嬉しい」
私の言葉に葉琉が目尻を下げて微笑む。
「俺も菜緒に会えて良かった。じゃあ桜大くん、お大事に」
「うん……あの……」
「なに?」
「あの日のことなんだけど……また会えたら、のあと……何て言ってくれたの……?」
葉琉は私の質問にふっと笑った。
「また会えたら、その時は笑ってくれてたらいいなって」
葉琉の言葉に胸が熱くなる。私と同じように葉琉も私を想っていてくれていたことが嬉しかったから。
「ありがとう」
「こちらこそ」
私は笑顔でお辞儀をすると診察室をあとにした。



