重い沈黙が流れるなか、私と葉琉はただ目の前の川の流れを見つめていたが、私は卒業証書の筒を握り直すと立ち上がる。
「……先にいくね」
「菜緒……いつかまた会えたらさ……」
その時、びゅっと春風が吹いて葉琉の言葉の最後はうまく聞き取れなかった。
聞き返そうかとも思ったが、何となくやめた。
これ以上、葉琉と話すのは辛い。
話せば話すほど、どんな小さな思い出も交わした言葉のカケラも、葉琉とのことは桜のように心の中を淡く薄紅色に色づけたまま、決して消えることも色褪せることもないから。
「……ありがとう。葉琉」
私はそう言って葉琉に背中を向けると、振り返ることなくその場を立ち去った。
「……先にいくね」
「菜緒……いつかまた会えたらさ……」
その時、びゅっと春風が吹いて葉琉の言葉の最後はうまく聞き取れなかった。
聞き返そうかとも思ったが、何となくやめた。
これ以上、葉琉と話すのは辛い。
話せば話すほど、どんな小さな思い出も交わした言葉のカケラも、葉琉とのことは桜のように心の中を淡く薄紅色に色づけたまま、決して消えることも色褪せることもないから。
「……ありがとう。葉琉」
私はそう言って葉琉に背中を向けると、振り返ることなくその場を立ち去った。



