「俺の番号、登録しておいてね。何かあったらかけてきて」
「分かった。佐々木くんもね」
「……ん」
少し照れたように、佐々木くんは重い腰を上げた。これから病院へ行くのかな?それじゃあココでお別れだな。
いま教室はどういう雰囲気になっているだろう。心配はあるけど、佐々木くんよりも先に教室へ戻って皆の反応を見たい。おばあちゃんのことを思って涙を流す心の優しい彼がもう傷つくことのないように、皆の誤解を完璧に解いておきたい。
それに教室から出て行く時、私ってば偉そうなこと言っちゃったし。あのことも皆に謝りたいんだ。そうやって皆との溝を埋めて、新たに皆と仲良くなれたら―――
「……」
「ん?どうした、水野」
まだ座ったままの私を見て、佐々木くんがコテンと頭を横へ倒す。それでも動かないものだから「何やってるの」って、笑いながら私へ手を伸ばす。
触れた手は温かくて、どこか心地良くて。ずっと握っていたいって、そう思ってしまう。



