「私は佐々木くんに頼ってもらえて嬉しかった。それに震えている佐々木くんを一人にはしたくなかったし」
「震えてるって……いや、もういいよ。素の俺を見せちゃったんだから、もう言い訳できないし」
「うん、言い訳しなくていいよ」
佐々木くんの顔を覗き込む。
「素の佐々木くんもステキだったから」
「!」
カッと、佐々木くんの耳まで赤く染まる。髪をグシャっと乱暴にかいた後「あ~」と、彼にしては低い声で悶えた。
「水野のそういう所、ズルい」
「ズルくないよ。本音を言っているだけ」
「だから……そういう所だよ」
「?」
言うと、佐々木くんはベンチの上に置いていたスマホを持ち上げる。そうして、ぎこちなく体の向きを私へ変えた。
「電話番号、教えて」
「え?」
「これから用があった時、もう走るのは嫌だからさ。俺、あんまり体力ないし」
「……ぷッ」
「こら、笑うな」
はいはい、と生意気な返事をした後。私の番号を言う。ほどなくして、ポケットに入ったままの私のスマホが音を立てた。



