心とりかえっこ


――俺に傷つけられたなら、そっと距離を置いて、二度と近づかないで
――離れられる寂しさを知っているから

ねぇ佐々木くん、あなたの言う通りだった。仲良くなれるかもと期待するから、そうじゃなかった時の喪失感や絶望感がハンパないんだ。身に染みるんだ。一度でも明るい未来を想像してしまったからこそ。

結局仲良くなれないのなら、最初から話しかけられない方がマシだ。近づかないでほしい。私をそっとしておいてほしい。誰も私のことを分かろうとしてくれないなら、今だって私のことを放っておいてくれたらいいのに。

「水野と佐々木がそんな関係だったなんてな」
「でも水野さんってサバ女だから」
「ね、どんなタイプでもいけそうだよね」
「相手が不良でも全然平気そう」

俯いた私へ、皆のヒソヒソ声が次々に刺さる。

あぁ、泣きそうだ。
泣いてしまいそうだ。

だけど皆の前で泣くと「サバ女に涙なんて似合わない」と言われてしまう。それは嫌だ。もう傷つきたくない。絶対に涙は隠さないと――決心して拳を握りしめた、その時だった。

バタンと勢いよくドアが開かれ、佐々木くんが教室に入って来る。そして私を見つけるや否や、開口一番、


「水野!」


と、私の名前を叫んだ。