心とりかえっこ


「佐々木くんのこと、あなたのおばあちゃんはちゃんと見てるよ。目の中に入れても痛くないって言ってた」
「あのおしゃべり……」
「素敵な関係だなって思ったよ。一度会っただけだけど、私おばあちゃんが大好きになっちゃった」
「……あっそ」

彼の机上に乗ったままのお弁当を見る。おばあちゃんが佐々木くんのことを語っている時の、あの幸せそうな顔を思い出した。

佐々木優羽。
その名の通り優しい子だと、おばあちゃんは嬉しそうに話してくれた。

「……ごめん」
「え?」
「ぴ助に酷いこと言った。まだ謝ってなかったから」
「……うん、いいよ」

おばあちゃん、私もそう思う。佐々木くんは名前の通り優しい人だと思うよ。少し心がひねくれているけれど、きっと根から悪い人じゃないって分かる。いや、やっと分かった。

言葉で傷つけられることがあるけれど、だけど言葉を交わして得られることもあるんだね。

「噂」から逃げてばかりの私だけど、いつか向き合って誤解を解けたなら……その先に大切なものが待っているのかもしれないね。例えば今みたいに。