心とりかえっこ


「ごめんね」
「なにが?」
「さっき、懲り懲りなんて言っちゃって。良くない言葉だった」
「……」

立ちすくむ私の正面で、椅子に座る佐々木くん。私を見あげた時、その口に描かれているのはゆるやかな弧。

「やっぱり水野って飽きないね」
「ちょっと、真面目に言ってるんだけど」
「そうは言われても、真面目に言われると困っちゃうから」

言うやいなや佐々木くんは私から逃げるように席を立ち、窓際へ移動した。

「あー皆が戻ってくるまで暇だな」なんて、白々しい言葉まで吐いて。

「どうしてはぐらかすの?」
「苦手なんだ。真面目な話はしたくない」

全く私を見なくなった彼。その背中をジッと見つめる。

真面目な話が苦手って、どういうことだろう?