心とりかえっこ

「佐々木くんのお弁当を預かったの。あの方は佐々木くんのおばあちゃんで、」

近藤さんが待っていてくれたことが嬉しくて説明していると、みるみるうちに彼女の顔がぐにゃりと曲がっていく。そして「うわ」と、足を後ろへ一歩引いた。

「水野さん、あの佐々木くんのおばあちゃんと仲良しなんだ。しかもお弁当を預かるなんて。不良の人の家族とそこまで仲良しになるなんて、私には無理」
「え」
「やっぱ水野さんって、噂通りサバサバして誰に対しても壁がないんだね」
「!」

絶句した。まさかそんな風に思われるなんて。ただ私は、クラスメイトのお弁当を預かっただけなのに。

佐々木くんのお弁当を預かったからそんな風に言われるの?それとも私が受け取ったから、そんな風に言われるの?

「私、先に行くね」
「……うん」

見た目通りの人ではないと言ってくれた近藤さんが、「噂通りサバサバしている」と言い残して、去っていく。私は何の反論も出来ないまま、彼女の背中を黙って見つめた。

腕の中のお弁当は、まだ温かい。さっきのおばあちゃんの笑顔を思い出して、私は泣きそうになった。