数秒ほど考えると、昨日ケンカ後に私を教室まで送ってくれた佐々木くんの顔が浮かんだ。なんと目の前のおばあちゃんと佐々木くんの困った顔が瓜二つなのだ。
そういえば彼は以前「おばあちゃんからタオルを渡された」と言っていた。もしかして彼女は――私は近藤さんに「ごめん」と謝る。
「あの人、たぶん知っている。ちょっと話してくるから、先に行っててくれる?」
「え……」
「すぐ戻るね」
そして校門へ走る。上履きのままだから、砂では無くコンクリートを選びながら近づいた。もしもこんな所を先生に見られたら怒られるだろうな。
だけどおばあちゃんを放っておけないよ。佐々木くんに関する重要なことかもしれないし……いや、佐々木くんを心配しているとかではなく、困っているおばあちゃんを放っておけないだけだから。
必死に自分に言い聞かせながら、おばあちゃんへ声をかかえる。
「どうかされましたか?」
するとおばあちゃんは水を得た魚のように、パッと表情を明るくした。
「一年B組、佐々木優羽の祖母です。お弁当を作ったのに、あの子ったら忘れてしまって。どうしようか迷ったけど、結局届けに来てしまったわ」
やや腰の曲がった、白髪のおばあちゃんだ。七十歳を超えていそうな落ち着いた雰囲気。穏やかな声に優しい話し方が、どこか佐々木くんを連想させる。
そういえば彼は以前「おばあちゃんからタオルを渡された」と言っていた。もしかして彼女は――私は近藤さんに「ごめん」と謝る。
「あの人、たぶん知っている。ちょっと話してくるから、先に行っててくれる?」
「え……」
「すぐ戻るね」
そして校門へ走る。上履きのままだから、砂では無くコンクリートを選びながら近づいた。もしもこんな所を先生に見られたら怒られるだろうな。
だけどおばあちゃんを放っておけないよ。佐々木くんに関する重要なことかもしれないし……いや、佐々木くんを心配しているとかではなく、困っているおばあちゃんを放っておけないだけだから。
必死に自分に言い聞かせながら、おばあちゃんへ声をかかえる。
「どうかされましたか?」
するとおばあちゃんは水を得た魚のように、パッと表情を明るくした。
「一年B組、佐々木優羽の祖母です。お弁当を作ったのに、あの子ったら忘れてしまって。どうしようか迷ったけど、結局届けに来てしまったわ」
やや腰の曲がった、白髪のおばあちゃんだ。七十歳を超えていそうな落ち着いた雰囲気。穏やかな声に優しい話し方が、どこか佐々木くんを連想させる。



