心とりかえっこ

あっけらかんと言った佐々木くんは、手を叩いて面白がる。続けて「お前ら見る目ないなぁ」と目を細めてニヒルな笑みを浮かべた。

「こんな大人しそうな女が遊んでるわけないでしょ。もういいかな?充分に楽しんだでしょ?その子、俺にちょうだい」
「な……!」

ちょうだい、って!
私を〝物〟みたいに言わないでよ!

だけど先輩たちから私を助けてくれる気はあるみたいでホッとした。本当に見捨てられるかと思っていたから。

それに、さっきの言葉は嬉しかった。私じゃない第三者が「どこがサバサバ系女子なんだよ」と、私の見た目を否定してくれたからだ。よりにもよって〝ぴ助をぞんざいに扱った佐々木くんが〟ってところが引っかかるけど。

だけど「本当の私」を知る人がいるって、嬉しいことだ。心細かった心がポカポカと温かくなってくる。私って、案外単純かもしれない。

「へぇ、つまり佐々木の女ってことか?」
「違う違う。俺のタイプは真逆だよ」

「……」

私のどこの部分をとって「真逆」と言ったのだろう。もしかして失礼なこと?

聞いてみたかったけど先輩たちが「へぇ」と指の骨を鳴らし始めたから、おしゃべりは中断。どうやらケンカが始まるらしい。不穏な空気が、この場へ一気に流れ込む。恐れおののいた私は、再び自動販売機をつかんだ。