絶対零度の王


黒瀬本社ビル、地下3階。
“白凰の心臓”と呼ばれる巨大サーバールーム。
そこに、すでに時限爆弾が設置されていた。

タイマー残り24分36秒。

生徒会メンバーはビル内の避難誘導に動き、前と風間樹が解除に取りかかる。
だが――

「……無理です。これ、手動で起爆する“自爆装置”が付いてます。起動は外部から。……このままじゃ」

「呼びなさい。あの人を」

華鈴の声に、通信越しの全員が息を飲んだ。

「――黒瀬龍臣を、白の間へ」



◆白の間。再び。

炎を遮断する防壁が張られる中、龍臣は静かにその椅子に腰を下ろしていた。

「来たか、華鈴。……“王”になった女が、何を求める」

「答えを。“なぜ”私の両親を殺したの?」

「価値がなかった。簡単なことだ。弱さは血筋を汚す。あの二人は甘すぎた。“家”を守れぬ者に、生きる資格はない」

「――最低ね」

華鈴は一歩踏み出す。

「じゃあ私は? 病弱で、喘息持ちで、時には倒れて、泣いて、迷って、でも――それでも、立ち続けた。
私は、“そんな私”を、愛してくれる人たちに囲まれて、ようやく王になったのよ」

「甘い。“感情”に支配された者は必ず滅びる」

「だったら、私は――あなたを倒して証明する。“強さ”は、冷酷さじゃないってことを!」



龍臣がボタンを押す。

「ならば、試してみろ。命でな」

サーバールームの時限装置が“手動起爆”モードに切り替わった。

残り時間――09:42

そして龍臣の背後から現れたのは、黒瀬家秘蔵の影武者部隊。
精鋭10名。すべて暗殺術に通じ、裏社会で名を知られる者たち。

華鈴は、ゆっくりと黒の礼服の裾を払う。

「……全員、倒して行くわ。あんたの目の前でね」



◆戦闘シーン

前が通信越しに叫ぶ。

「華鈴様、今行きます!」

「――来なくていい。これは、私の戦い。前には、未来を守ってほしい」

その言葉に、前は唇を噛みながらも通信を切った。

「……俺の主は、あなただ。信じてます、華鈴様」



◆9人目を倒した直後。

最後の一人は、華鈴の腹部に刃を突き立てようとするが――
華鈴は、カウンターでその手首を折り、瞬時に地面へ倒す。

その瞬間、呼吸が乱れ、咳がこみ上げる。

(まずい……このタイミングで)

龍臣が立ち上がり、華鈴の顔に近づく。

「……苦しそうだな。やはり“価値”はなかったか」

「……違う……私には、彼がいる」

「前? お前の“犬”か」

「彼は私の――心臓よ」

その瞬間、背後の扉が開く。

前が、銃を片手に駆け込んできた。

「華鈴様――離れてください!」

「前、来ちゃダメって――!」

「知ってます。でも、あなたが倒れる瞬間なんて、もう二度と見たくない!」



◆最終局面

龍臣が手動起爆ボタンに手を伸ばす――そのとき。

パンッ

前が撃った銃弾が、龍臣の手を貫く。

その場に崩れ落ちた老人の前に、華鈴が立つ。

「終わりよ。祖父様。……私は、あなたを超えた」

「……フ、フハ……見事だ。ようやく……“黒瀬”が完成した……な」

そう呟き、龍臣は意識を失った。



◆爆弾は風間と怜の連携で完全に無力化された。

建物も守られ、誰も死ななかった。
唯一、古い“時代”が終わった。



屋上で、朝焼けの空の下。

「……終わったね、華鈴様」

「ええ。ようやく、“生きる”って意味が、わかった気がするわ」

彼女の瞳は、穏やかで、でも決して揺るがない。

「前」

「はい」

「次の誕生日……何があっても、隣にいてくれる?」

「それは……命令ですか?」

「ううん、“願い”よ」

「なら――何度でも、誓います」