絶対零度の王



黒瀬華鈴、17歳。
この日、彼女は黒瀬家“第九代総帥”として正式に戴冠することとなった。

その儀式は、地上300メートル――**黒瀬グループ本社の最上階・“白の間”**で行われる。
そこには、政財界の重鎮、裏社会の首領、そして世界の影に潜む“観察者”たちが集う。

「……この式を終えたら、もう戻れないわよ」

鳳条雅が横で呟いた。

「……いいの。戻るつもりなんて、最初からなかった」

華鈴は白と黒の礼装を身にまとい、胸元に一輪の黒薔薇を挿していた。
その瞳は、かつてよりも冷たく、そしてどこか優しくなっていた。



◆式の流れ:
1.黒瀬龍臣による“選定の言葉”
2.華鈴の“血の誓約”
3.“継承の指輪”の授与
4.黒瀬家総帥の玉座への着座



「――この者、黒瀬華鈴は、己が命と魂を以て、黒瀬の名を受け継ぐと誓うか」

「はい。私、黒瀬華鈴は――“秩序と闇”を抱きしめ、この国の未来を導くことを誓います」

「よいだろう」

龍臣が、彼女の左手に指輪をはめる。

それは黒瑪瑙(ブラックオニキス)でできた、黒瀬家に伝わる指輪――“夜の王印”。

「この瞬間より、黒瀬華鈴を――黒瀬家第九代総帥、“黒の女王”と認める」

一斉に、会場にいた全ての者が、彼女に頭を下げた。

裏社会のトップですら、膝をついた。



◆儀式の終了後。控え室。

「……華鈴様」

蔭山前が、静かに跪いた。

「あなたは、今や“絶対”です。……それでも、俺はあなたの剣であり、盾であり、ただの男でありたい」

「……だったら、立って」

華鈴は彼の手を取り、自分の高さまで引き上げた。

「私は“王”になったけど、でも……前の前では、普通の女の子でいたいの」

彼の胸に顔をうずめながら、小さく呟く。

「ねぇ、前。これからも一緒にいてくれる?」

「はい。永遠に、華鈴様のそばに」



だが――

戴冠式の最中、誰にも知られず仕掛けられた爆弾があった。

風間樹が異常に気付き、緊急コードを発動する。

「会長!本社ビル地下のサーバールームに、爆破装置が仕込まれてます!タイマーは……残り30分!」

「誰がそんな――」

「……恐らく、祖父様です」

その言葉に、華鈴の表情が一変した。

「……これが、龍臣の“最終試練”ってわけね」