絶対零度の王



「――これより、“黒影”狩りを開始する」

生徒会室。深夜0時。
白凰学園の象徴である円卓に、5人の精鋭が集っていた。

その中央で立ち上がったのは、生徒会長・黒瀬華鈴。
鋭く燃えるような黒瞳は、誰にも“迷い”を感じさせなかった。

「……本当に始めるのかよ、華鈴。あいつらに手ェ出したら、ただじゃ済まない」

会計の鳳条雅が口角を歪めたが、すでに“戦い”の表情を浮かべていた。

「構わないわ。これは、“私”の命令。従えないなら、ここで抜けてもいい」

「……バカ言え。生徒会長の命令に逆らえる奴が、この学校にいるかっての」

「もちろん、僕も従うよ」
副会長の一条怜がメガネを押し上げる。
「“黒影”の出入り口は3カ所。うち2つは裏路地に隠されたルート。3つ目は、おそらく……学園地下」

「地下ルートは私が塞ぐ」
華鈴が言い切った。

「私は“獣の檻”を閉じる。前を殺させない。誰一人、死なせない」

その声には、凍てつくような殺意と、絶対の意志があった。


◆ 作戦コード:黒薔薇の鎖

役割分担:
•華鈴:地下ルートにて“黒影”本隊の足止め。囮兼殲滅。
•一条怜・風間樹:監視カメラと通信を掌握し、校内の動向を把握。敵の動き全体を指揮。
•鳳条雅・水瀬美月:黒瀬家関連施設を捜査。前の潜伏場所に敵が迫っていないか確認・妨害。


深夜1:17、学園地下通路。

「……来たわね」

暗闇の中、黒コートを着た数名の男たちが静かに侵入してくる。
全員、“黒影”と呼ばれる黒瀬家直属の処刑部隊。

そのとき、通路に光が走った。
轟音と共に天井が崩れ、男たちの前に黒い影が降り立った。

「ようこそ、私の領域へ――」

華鈴は、黒薔薇の刺繍が施された戦闘用コートを纏っていた。
手には電撃スタン付きの特製日本刀。鋭く冷たい視線が男たちを貫く。

「……お嬢、何をしておられるか。これはお身内同士の、粛清です」

「“身内”に、私の命令を無視する権利はない」

次の瞬間、華鈴の姿が一閃した。

「ッ――!」

先頭の男の腕が、音もなく切り裂かれる。
その動きは、獣よりも早く、美しかった。

「命が惜しいなら、帰れ。ここは、“生徒会長”の支配する場所」

敵の一人が躊躇した瞬間、背後から閃光弾。
風間樹の支援だ。

「今だ、華鈴!」

一条怜の声がヘッドセット越しに響く。
華鈴は再び、無駄のない動きで一人、また一人と無力化していった。



一方、別行動をとっていた鳳条雅と水瀬美月は、前の潜伏先へ向かっていた。

「雅さん、GPSが……もうすぐ、前さんの部屋に敵が……!」

「遅いわけにいかないわね。やるわよ、美月!」

雅はスカートの中からスティレット(短剣)を取り出した。

「生徒会の名に懸けて……殺らせない!」



そして、全員が任務を終えた頃――

華鈴は地下でひとり、血のついた刀を手に立ち尽くしていた。

「……終わったわ、前」

通信越しに聞こえる前の安堵した息が、華鈴の胸に染み込む。

(もう、誰にも奪わせない)

その夜、“白凰学園”は静かだった。
誰も、“黒影”が来ていたことにすら気づかない。

だが、生徒会だけが知っていた。

華鈴という“少女”が、“支配者”として、また一つ、闇に足を踏み入れたことを――