あの青い屋根のお家で一緒にジュースをごちそうになったなあ。

この外壁によくボールをぶつけて怒られたんだった。

あそこにいる犬に理沙はよく吠えられてたっけ。


巡る思い出が、色褪せない思い出が苦しい。



こんなにも一緒にいてそれでもなお隠し事がある、そんな自分が嫌になる。

理沙を誰よりも信用してる。

でも、脳裏によぎるのはあの日の苦い思い出。


怖い、苦しい、悲しい、辛い。


全部放り出したいのに、そうさせてくれないのは一緒にいた時間が長いから?思い出がそうさせてるの?


だったら、そうだったなら、諦めちゃいけないと思う。

それは、なるべくしてなってると思うから。

そうなる理由が絶対にあるはずだから。


家の玄関の前、手を胸の位置に重ねる。


ドキドキしてる。

地球が終わる。
単に理由はそれだけじゃない。

まだ夢をみているよう。


大きく深呼吸をした。



「よしっ」


玄関のドアを勢いよく開けて、靴を脱ぎ捨てた。

自分の部屋に行くこともせず、リビングにカバンを放り投げる。


「お母さんただいま!行ってきます!!」


そう叫ぶときょとんしたお母さんと目が合った。


今やるべきことは一つ。

制服のまま飛び出した。


手にはもうくしゃくしゃになりかけている手紙。



今、会いたい。

ただ、会いたい。









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地球滅亡まで あと1時間57分

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